WONDER-FULL「愛でしかない」PR

WONDER-FULL|正体不明バンドが“愛と平和”を音楽で発信する理由

終戦記念日である8月15日にWONDER-FULLがデビューアルバム「愛でしかない」をリリースした。

顔もプロフィールも一切明かさない5人からなるWONDER-FULLは、6月に個々の演奏パートごとに分けたミュージックビデオを公開、7月11日にはオフィシャルサイトで「我々は愛で世界を懐柔して、平和を維持していくことを目指す」と宣言した声明文を発表し、音楽ファンを中心に話題を呼んでいる。

今回、音楽ナタリーでは謎多きバンドのボーカリストに単独インタビューを実施。「愛と平和」をテーマに掲げる彼らの真意はいったい何なのか。匿名で活動する理由や楽曲に込められたメッセージなどについて聞いた。

取材・文 / 秦野邦彦 撮影 / 上山陽介

ミュージシャンが境界線を壊して集まったバンド

──まず7月に声明文を発表されました。「我々、ロックグループWONDER-FULLは、混迷する現在の社会情勢において、世界中の人々が平和に暮らせる権利を行使できるようにするため、歌を通してメッセージを発信していく」とあります。

WONDER-FULLの声明文

そうですね。できるだけたくさんの人にメッセージが届くようにしたいと思って。

──なぜ正体を明かさずに活動しているんですか?

リスナーに固定観念を持ってほしくなかったからです。「〇〇がやるからこんな感じの音楽だろう」といった無駄な情報なしに聴いてもらうのが一番大事なことじゃないかと思ったので、名前も出さず、顔も出さず。そうすることで言葉がストレートに伝わるはずだと。1つ言えるのは、我々はクオリティの高い音楽に今伝えなければならないメッセージを乗せるという意思を持って集まった同志であり、“国境を越える”をモットーにそれぞれのミュージシャンが境界線を壊して集まったバンドだということです。

──その伝えなければならないメッセージの1つがリード曲「愛でしかない」であり、1stアルバム「WONDER-FULL」というわけですね。

アルバムには「愛でしかない」のほかにも「抱きしめあいたい」「時間論」など憲法9条になぞらえて全9曲が入っているんですが、どれも今のタイミングで絶対言わなければならないことをストレートに届く言葉で表現できたと思います。「愛でしかない」っていうのは本当にそうで。この何年かずっと愛を忘れてしまったまま、世の中を動かせる立場にある人たちが動いている。なので、まさにタイムリーな日にリリースできるかなと思います。

──8月15日、終戦の日ですね。アルバムを全曲聴かせていただきましたが、どの曲もシンプルな言葉でメッセージがつづられていて、音楽で平和を実現させたいという意志が感じられました。

コンセプトとしてジョン・レノンとオノ・ヨーコが1960年代後半から70年代にかけて“War Is Over”であるとか“Give Peace a Chance”をスローガンとして自分たちの持てる影響力を平和に向けて発信した行動を引き継いでいる人がいないなと思って、すごく危惧していたんです。

──はい。

WONDER-FULLのボーカリスト

日本人でそのバトンを受け取ってがんばっておられたのは忌野清志郎さんだと思うんです。THE TIMERSのあり方も1つの戦いの象徴としてヒントになりました。清志郎さん亡きあと、どなたもやらないんだとしたら我々がやらなければならないなと。バトンを受け取って自分が走るつもりでスタートしました。本来、音楽で世界を変えられるはずだったのに、音楽活動を再開した矢先にジョンが1980年に暗殺されてしまった。もし彼が生きていたら、音楽をもっと平和のために機能させていたはずです。マイケル・ジャクソンが亡くなる前に予定していたツアーも同じように平和のために行われるはずだったんですよ。彼の死も謎が多いですけど。と言うことはWONDER-FULLも謎の死を遂げるかもしれない。だから誰がやっているかわからなくしているという考え方もできます。

──ウィキリークスの運営体制のようですね。

そういう意味ではバンクシーの活動もすごく参考になりました。名前を出さないからこそ、あれだけ社会性に富んだメッセージを世界中で発信できる。僕はジョンのバトンをバンクシーが受け取って、名前を出さずにやってる感じがするんです。それは音楽でもやるべきだし、それがWONDER-FULLだという気持ちでバンドを立ち上げました。

──ジョンもバンクシーも自身のメッセージを作品に昇華しつつ、ある種のユーモアをもって世間に発表していることが大きな特徴だと思います。

そうですね。彼らの作品って、まず目を引くじゃないですか。「えっ?」って。そして真意を理解しようとする。やっぱりアートでも音楽でもメッセージがないものってどうなんだろうというのは常々思っていますから。優れた表現というものは社会になんらかの影響を与えるものなので、その影響は広い意味でピースにつながっていないと、なんのために地上に生を受けたのか。音楽やアートこそ本来直接的にそういうことを伝えなければいけないはずなのに、それをしないまま数十年が過ぎてしまったという感じがします。

よく言ったなと思うんです。「愛こそがすべて」だって。

──この半世紀の間に、音楽そのもののあり方も変わりました。昨年「音楽に政治を持ち込むな!」というツイートが話題になったことも結成の動機となったそうですが、これについても詳しくお聞かせください。

WONDER-FULLのボーカリスト

最近も「政治って意外とHIPHOP」 という自民党・新潟県連の政治塾ポスターが批判されたじゃないですか。ヒップホップの歴史を考えれば、こんなナンセンスなことはないですよね。ロックだってレゲエだって、体制や差別に抵抗するための反逆の音楽としての歴史がある。それなのに「音楽に政治を持ち込むな!」という声が起きるほど、両者が分離されてしまったということでしょう? 僕が言いたいのは別に右だ左だと言うことじゃなく、みんな包括して「いいよね」と思うことはあるだろうということです。それは音楽の力とかアートの力で感じられることだと思うので。

──なるほど。

白か黒かじゃないといけないみたいな風潮が強くなってきていますが、両方共戦ってるふりをして同じことを言ってたりするわけです。だったら「グレー最高!」と言う人がいてもいいのに、やらないじゃないですか。別に地球上にいる生命体として何が大事なのかということをまず考えたら、そんなにややこしいことじゃないと思うんです。とてもシンプルなことで、それは“愛”だと思うんです。地球という環境がまず“愛”じゃないですか。我々が生命体として存在できるのは地球という優しさがあるからじゃないですか。

──主義信条以前に、まず“愛”があると。

そのことに感謝しながら物事を考えれば、おのずとやっていいこと、いけないことがわかるはずなんです。それなのに自然の一部としてどう動いたら一番いいのかを置き去りにして、人間至上主義になっていく。立ち返れば誰でもわかっていることなのに、いや、わからないとごまかされて一部の人間が得するようになっているのが今の世界です。だから戦争が起きてしまう。戦う必要ないじゃないですか。単純に撃たれたら血が出るし、戦争は痛いんだから。それをなぜするのか、やめようよというだけの話なんです。

──ただ、現実世界はますます複雑化しており、おっしゃるような概念では済まない状況も事実だと思います。

だから誰も言わないと、どんどん風化して忘れられてしまうじゃないですか。多少“お花畑”だと言われようが、音楽という手段を使って地道に訴えていくことは決して無駄ではない。「愛でしかない」はそういう世の中の動きを感じて作ったという感じです。ビートルズの「All You Need Is Love」って、よく言ったなと思うんです。「愛こそがすべて」だって。

WONDER-FULL「愛でしかない」
2017年8月15日発売 / タワーレコード
WONDER-FULL「愛でしかない」

[CD] 2160円
WNDR-1001

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TOWER RECORDS

収録曲
  1. 愛でしかない
  2. 抱きしめあいたい
  3. 時間論
  4. 水のワルツ
  5. 悲しい匂い
  6. 風靡
  7. It' s all love(「愛でしかない」 English ver.)
  8. 사랑밖에없어(「愛でしかない」 Korean ver.)
  9. I'll hold you, too(「抱きしめあいたい」 English ver.)
WONDER-FULL(ワンダフル)
WONDER-FULL
一切の素性を明かしていない5人組のロックバンド。「愛と平和」をテーマに掲げ、東京都内を中心に活動している。終戦の日である8月15日に全国流通の1stフルアルバム「愛でしかない」をリリースした。